彼によれば、その彼女は聖が幼い頃から加賀谷家で家政婦として働いている六十代の女性らしい。
だとしたら、七緒にわざわざ給料を払ってまで家事をしてもらう恩恵はそれほどないのでは……?
ふとそんな疑問が沸いたが、ここまで来た以上もう後戻りはできない。
「七緒の部屋はこっちだ」
聖が手招きで呼び寄せたのは、リビングからいったん廊下に出て右手にある八畳ほどの部屋だった。セミダブルのベッドには布団もしっかり用意され、ソファとテーブルまで置かれている。
「もしかしてここも準備してくださったんですか?」
「俺から誘っておいてなにも用意しないわけにはいかないからね。インテリアやファブリックが気に入らなければ買いなおすよ」
「いえっ、このままで十分です。というか、とっても素敵」
白い壁や白い床はリビング同様。ソファやカーテンはアースカラーで揃えられ、とても落ち着いた雰囲気だ。七緒の好みにぴったり。



