「七緒? どうした?」
言葉を忘れて呆然と突っ立つ七緒を通り越して、聖がカートから荷物を下ろす。
「ここ、自宅ですよね?」
「そうだけど」
「高級ホテルみたい」
そんなホテルに泊まった経験はないが、雑誌やテレビで見たことならある。
「ホテルも手掛ける有名なデザイナーが設計したらしいから、その認識は合ってる。ともかく上がって」
聖は備え付けの棚から真新しいピンクのスリッパを出して七緒の前に置いた。聖が履いたグレーのスリッパとお揃いだ。
「もしかして用意してくれたんですか?」
「恋人だから色違いにしてみた。どうだ、なかなかいいだろう」
自慢げに見せびらかす。家の中まで恋人として過ごすつもりだろうか。
(まさか寝室も一緒ではないよね……?)



