「七緒の頭の中が今、透けて見えた」
ニヤリと笑う顔にギクッとする。
「な、なにが見えたんですか」
「さて、なんでしょう」
もったいぶった意味深な口調と顔がとても意地悪だ。
七緒が「知りません」としらを切ると同時にエレベーターが三階に到着。聖に続いて降りた。
ダウンライトが優しく照らす通路は、ロビーほどではなくとも天井が高くおまけに広い。アレンジメントフラワーを置くスペースもゆったり確保されており、部屋でも通用しそうである。
カートを押して歩く聖が足を止める。立派な木製のドアを開錠し、「どうぞ」と七緒を先に通した。
「おじゃまします……」
一歩足を踏み入れた瞬間、目の前に広がったのは予想以上の光景だった。
もはや玄関と呼んでいい代物ではない。二層吹き抜けのエントランスホールはパールホワイトの大理石でできており、壁も同様の色で合わせたエレガントな空間。そこに架かる緩やかな螺旋階段が優雅な曲線を描いていた。メゾネットタイプの部屋のようだ。



