駐車場から直接部屋のフロアまで行けたら楽だろうが、警備的な都合があるのかもしれない。
先ほどのコンシェルジュがいるカウンターの前までくると、結婚を控えたふたりに見えるよう聖にさらにくっついて甘い雰囲気をアピール。ぎこちないのは否めないが、会釈で通り過ぎた。
セキュリティゲートを二度抜けてエレベーターに乗り込むと、彼と組んでいた腕を解き、肩を上下させて息をふぅと吐く。
「恋人っぽく見せるのって、結構難しいですね」
回りの視線が気になるし、なによりも聖を意識してしまう。
「そう?」
女性慣れしているであろう聖は難なくできるみたいだ。
「なら、これからレッスンも必要だな」
「レッスン?」
「同居すればチャンスはいくらでもある」
いったいどんなレッスンをするつもりなのか。想像がエスカレートしたため頬が熱を持つからたまらない。



