「俺がいるじゃないか。なにしろ恋人だ」
「本物じゃないですけど」
給料が発生する雇用主だ。
「心配するな。俺といて寂しいと感じている暇はない」
「……マンションの部屋、そんなにひどい状態なんですか?」
「どういう意味?」
聖が前を向きながら首を捻る。
「目が回るほど掃除が大変なのかと思って。人が住む環境ではなくなっているのかな?と」
「たとえばごみ屋敷的な?」
はい、と頷く。それもかなり程度のひどい。一日やそこらでは片づけられない有様の部屋を想像したら、さすがに背筋がぞわっと総毛立った。
「おいおい、さすがにそれはないだろ。食生活が乱れている以外は普通だ」
不服そうに眉根を寄せているのが横顔からもわかる。



