偽りなのにそこまで断言して大丈夫なのか心配になり、彼の横顔を見上げる。真っすぐ孝枝を見つめる聖はその場限りの出まかせを口にしているように見えず、七緒はかえって動揺した。おかげで心臓がうるさくてかなわない。
「聖さん、私の大切な孫娘ですから、よろしく頼みましたよ」
聖は深く頷き、もう一度頭を下げてから七緒を助手席に乗せた。
ゆっくり発進する車の中で窓越しに手を振る。気のせいか孝枝が涙ぐんでいるように見えて、胸がキリリと痛んだ。
バックミラーに映る孝枝と自宅がどんどん小さくなっていく。
「七緒? 大丈夫か?」
黙り込む七緒を聖が心配そうにチラッと見る。
「……あの家を出るなんて想像していなかったのでちょっと寂しいなって」
これまではせいぜい旅行で数日空ける程度だったから、今になって急に心細くなる。急展開でじっくり考える時間がなかったせいだろう。



