「あ、はい、ここにあるものでひとまず全部です」
普段七緒に見せるフランクな態度とは違い、紳士的な振る舞いで玄関に置いてあるダンボール箱やキャリーバッグを次々車に載せていく。
たった三つだけのためすぐに積み込みは完了し、残すは七緒自身だけ。車の脇に聖と並んで立った。
「じゃ、おばあちゃん、行ってくるね」
「〝行ってくるね〟じゃないでしょ。一生、聖さんの元にいる覚悟をしないとなりませんよ」
孝枝が優しく諭す。
(一生彼の元に……)
改めて、自分たちはとんでもないことをしようとしているのではないかと不安に駆られる。
なにも言えずに黙っていると、聖が七緒の肩を引き寄せた。あたたかみのある大きな手に少なからず心音が乱れる。
「おばあ様、七緒さんは僕にお任せください。必ず幸せにします」
演技を感じさせない声色と口調だった。



