翌日、私は仁くんと体育館の中に居た。
外は雨が降り、
体育館の屋根から雨音が聞こえる。
「あのさ、俺達別れよう」
仁くんは単刀直入に私に告げた。
私は言葉を失う。
「何で、嫌だよッ!何で……仁くんと別れるなんて……嫌ァ」
私は仁くんに詰め寄った。
「いやー参っちゃったよ!結空のおかあさんに怒られてさ」
「それは……ごめん」
「今までバレずに隠してこれたのに、もう無理だったわ!俺さァー結空以外にも付き合ってんだわ」
「はい?ッ仁君……」
「もう結空は必要ないからさ、忘れてくんない?」
私についた丸わかりな嘘を並べ、嫌われようとしているのがすぐにでも分かる。
言われる私に比べて、言いたくないことを口に出す仁くんの方がよっぽど辛かっただろう。
「もういいからそういうの!下手すぎ」
「いや、俺は本当に……」
「迷惑なんでしょ、私と居たら?それに仁君の親にも迷惑かけちゃうもんね。私と付き合ってたら、たくさん仁君傷つけちゃうし?」
仁くんは下を向きながら、首を横に振る続ける。
「私は……仁くんとずっと一緒に居たいし、仁くんが大好き。でも、それは私の一方的なワガママで、仁君にとって迷惑だよね?」
仁くんは首を横に振るのをやめた。
「ごめんね…ごめんねッ。今までこんな私を好きになってくれてッ」
私は一粒の涙が流れ落ちた。
「いや……俺の方こそ、何もしてあげられなかった。本当にごめん」
「ううん。そんなことない!今まですごく楽しかったよ」
仁くんと出逢い、
仁くんと付き合い、
仁くんと過ごした時間は私にとって、
とても幸せなな瞬間だった。
私には勿体ないぐらい優しくてイケメンな彼は、私が歩く道を明るく彩り、毎日を幸せに照らしてくれた。
もうこれ以上、そんな彼を傷つけることはできない。
自分のワガママで仁くんを振り回すことなんてできない。
私は言いたくない言葉を口にした。
「今までありがと、……ッ、私たち別れよッ」
「うん……じゃあ、俺行くね」
仁くんは涙を見られないよう、
足早に体育館を出て行く。


