忘れられない恋

「信じて欲しい!俺は結空だけだよ」


仁くんは真剣な眼で私を見つめていた。



「分かってる。仁君はそんな人じゃないって。最初から信じてたよ。でもね……怖かったッ!連絡が来ないから、もう一生来ないかもって、不安になってたんだよォ!!」


私は嘘だと知り、安心したのか、

涙目になっていた。



「その…ごめん。誰だか分かんないけど、彼女の親にあることないこと言われてさ、挙げ句の果てには親に怒られてさ!ものすごく凹《へこ》んだんだよね……さすがにキツすぎて……」


私が信じていてくれたことに、

感謝しながら続けて口を動かす。



「謝ったら認めたみたいになるからさ。どうしていいのか……分かんなくなっちゃったよ。それに時間が経つにつれて、何て送ったら良いのか分かんなくなっちゃって……」

仁くんは沈んだ表情で私に言った。



「謝らなくていいよ。だって……してないんでしょ?」



「うん。絶対にしてない」



「良かった。ずっと、その言葉を聞きたかったから……」



「ごめんね、俺ももっと早く話してたら、結空をこんなにも不安にさせてなかったのに」



「もォオ!!別れるかと思ったじゃん、ふふ」


私は仁くんの背中を強く叩き、小さく笑った。



「ごめん。俺もこんなんで終わったら、嘘ついた奴に負けた感じがして嫌だった。」


仁は怒りが込み上げてくる。



誰が何のために嘘の噂を結空の親に流したのか?


二人の邪魔だけはしてほしくなかった。



「あーー良かった。元通りに戻れて」


私は仁くんに飛びかかるようにして抱きついた。



今まで不安で寂しくて、ずっと、こうしてたかったから。


「うん。海斗達に感謝しないとだね」


私を受け止め、強く抱きしめる。


暗かった表情が今、

明るく笑みで照らされるようになっていた。



「だね!みんなに迷惑かけちゃうから早く練習始めなきゃ」


私たちは皆を呼びに走り出す。



「うん」


私たち二人の表情が笑顔に変わったのを確認し、安心したのか、小田先輩と遥は微笑んでいた。


やっと、いつもの日常に戻り、

誰もが喜んだ瞬間だったに違いない。