忘れられない恋

それから一週間が経ち、

二人はまだ話せずにいた。


休み時間、

教室内ではクラスメイト達が騒がしくする中、海斗が仁を慰めている。



仁は自分の机の席で放心状態になりながら、ずっと机に顔を伏せていた。


悪い噂が結空の家族に流され、結空とは音信不通、元気がないのは当然だろう。


ここ最近、こんな感じだった。



「おい、仁。元気出せってェ」


海斗は元気がない仁に困り果てていた。


いつもの絡み方ができないのはもちろん、見ているこっちまでどんよりとした気分になる。


仁は黙り込んだまま何ひとつ喋らない。



「なあ、だったら俺が結空ちゃんとこ行ってきてやろうか?」


海斗は仁の肩に優しく手を置いた。



「……」


仁は机に顔を伏せたまま首を横に振った。



「そっか……それにしても誰なんだろうな?仁の事を悪く言った奴?」


海斗は眉間に皺《しわ》を寄せながら、心当たりがないか考え込む。


どうしても許すことができない。


聞いたこともない仁の悪い噂を流した人物を。



「さあ……わかんねえ」


仁の頭はしばらく机から離れることはなかった。


モヤモヤが止まらない海斗。


この状況が続くのが堪らず嫌だった。