数日後。


日が暮れた晩、

下のリビングで私の両親がなにやら話しをしていた。



私の父親である木栖正利《きすみ まさとし》は、
不動産の社長をしている。


今日は仕事が休みで、

妻で私のおかあさんである千里とのんびり会話をしていた。



「あの子、彼氏いるみたいよ」


不貞腐れるように、

千里はボソッと口を開いた。



「彼氏?へぇ〜結空に彼氏なんていたのか?気づかなかったよ」


少し驚きながらも、正利の目尻は垂れる。



「ええ。ずっと隠してたみたい。私達にバレないように……」 


嫌味っぽく聞こえる口調に優しさなどない。


千里は笑うことなく、目を細めた。



「……そうか。もう高校生なんだからほっといてやりなさい」


千里の態度とは裏腹に、

正利は優しい口調で言った。


正利は私を溺愛していて、

とても優しい父親だった。 



「なによ!高校生だから危ないのよ!もし、子どもでも作られたら……はあ」


千里は次第に口調が強くなり、

どんよりした空気を作っていた。


千里は私に冷たく、

幸せそうにする私を見るのが、

嫌だったのだろう。


私に対してやけに当たりが強くなっていく。



「まあ、そんな怒るなよ。君の考えも分からないことないが心配いらないよ」


正利は千里を落ち着かす。



「はい?心配だらけよ。勉強もせずに彼氏ばっかりで!何のために高校行かせてあげてると思ってるのよ!」



「まぁまあ、もう高校生なんだし、結空もしっかり考えるはずだよ」


正利は真面目な表情で言った。