忘れられない恋

「ふふ、そんな見ないでよ」


歌い終わり、私は照れ笑いを浮かべる。



「あーーごめん。つい聴き入っちゃって」


私が一人で歌う時は、

いつもこんな感じで仁くんは聴き入るようにして、

私の歌う姿をマジマジと見ていた。



ずっと聴いていられる優しい声だからだって、

仁くんは私の歌声を愛してくれる。


それに、

私の歌声を独り占めできる感じが、

仁くんにとって最高に堪らなかったのかもしれない。



「そんな見られたら恥ずかしいでしょ」



「だよね……ごめん」



「じゃあ次は、仁君の番だよ」


「え?」



「ふふ、次は私がたくさん聴いてあげるね」


私は揶揄うようにして仁くんを見つめる。



「いいって!……恥ずかしいじゃん」


揶揄う私の表情を見て、仁くんは嫌な顔をした。



「嘘だって。一緒に歌おう!」



「あ……うん」 



「じゃあ、仁君の好きな曲入れるよーー」


私は曲を選ぶと、

よく一緒に歌う曲が流れ始めた。


この曲は二人の思い出の曲となり、

いつしか、

二人の着信音にまでなっていた。



「ありがと」


マイクを握りしめ、一緒に歌い出す。





部屋中に、

幸せな音色を響き渡らせながら、

二人の息のあった歌声が♡