忘れられない恋

その後、

私たち二人は幸せな高校生活を送っていた。



あれは、体育館倉庫でのこと。



朝練が終わり、体育館にはバスケ部員達がちらほら。



「もう、しまうのない?」


私は体育館倉庫で練習に使用した用具類を片付けながら、

仁くんに尋ねた。



「うん。もうないかな」


仁くんはいつもと様子が変で、やたら辺りを見渡し、

ソワソワしながら落ち着かない様子。


私が体育館倉庫から出ようとしても仁くんは私の手を引っ張り、

自分の方へと引き寄せ、体育館倉庫から私を出そうとはしない。



むしろ、体育館倉庫から出て欲しくないのがヒシヒシと伝わる。



どうしたんだろう?



こんな所で時間を潰しても退屈なだけなのにと思った時だった。



仁くんはゆっくりと顔を私に近づけ、

私の唇に唇を重ねる。



アッ!!今、私キスされたァ?!



頭と身体がフワッと浮く感じ。

そして、大好きな人の唇の感触が正確に感触として覚えてしまった喜び。



静かな体育館の倉庫の中、

私たち二人を邪魔する者はいない。


初めて触れ合う唇は、

フワッと宙に舞うぐらい、不思議な感覚だった。



突然のことに私は目を丸くし、

顔を火照らせることしかできなかった。