〔帰宅後〕
一ノ瀬先輩からメールが来たことを知らせる着信音に気づいた私は、
着替えそっちのけでケータイを見開き、
一ノ瀬先輩からのメールの内容を確認していた。
(木村⚪︎哉です《絵文字》)
一ノ瀬先輩から送られて来たメールに、
思わずクスッと笑ってしまった私は、
何て返そうか幸せな悩みを抱えている。
何これ、ふざけてる?
もしかしてツッコミ待ちかな?
下にスクロールしてみると、
まだ文章が書かれており、
私は最後まで目を通した。
(間違えた、一ノ瀬です《絵文字》
よろしくね《絵文字》)
私を笑かそうと一生懸命考えてくれたのがなんだか想像できた。
(間違うには無理があると思いますが《絵文字》笑笑
よろしくお願いします《絵文字》)
(面白すぎてケータイ落としてたら最初に謝っとく《絵文字》
ごめん《絵文字》ww)
(笑っちゃいましたが大丈夫です《絵文字》
しっかり握りしめてたんで《絵文字》笑笑)
今はいかに一ノ瀬先輩とのメールのやり取りを継続できるかが私の使命であり、
私は一ノ瀬先輩とのメールのやり取りに夢中になっていた。
好きな音楽や趣味、バスケ、学校のこと、
話題が途切れることなく毎日のようにメールは続き、
休みの日には電話なんかりもして、
距離がどんどん縮まっていく。
『ちょっとだけでいいから話さん?』
そんな『声を聞かして』と同じニュアンスの言葉に私はキュンとなって、
ほんの少しのつもりがいつも長時間の電話になる。
「えッ!?一ノ瀬先輩、干支順言えないんですか?」
「うん。子、丑、寅、卯、辰、巳までは分かるんだけど!その次が確か……あッ!!丑か!」
「いや、午ですよ。丑2回言っちゃってるし、ふふ」
何気ない会話一つ一つに笑いが絶えず、
こんなにも波長が合う人は他を探しても居ないと思えた。
「まだ結空ちゃんの声を聞いときたいな」
電話を切るのを躊躇う一ノ瀬先輩は、
このあと通話料金が高いと、
こっ酷く母親に怒られたらしく、
笑いながら私にそう教えてくれた。


