私は満開の笑みで微笑むと、仁くんは頷いた。
長年、
仁くんのことをなかなか忘れられず、
日々葛藤する毎日を送ってきたけど、
それが今やっと仁くんのことばかり、
考えてもいいに変わる。
今日まで長く辛いことばかりだったけれど、
やっと見つからなかった宝《幸せ》の在り処《答え》が見つかったみたいだった。
つい数秒前まで、
『運命』なんて存在しないと思っていた。
約束の日に会えず、
『運命の人ではなかったから会えなかったたんだ』と、
そう自分に言い聞かしていたんだと思う。
少しでも自分が傷つかないように、
少しでも自分の気持ちを落ち着かすために……
だけど、
またこうして逢えることができたのも、
きっと私たちが運命に引き寄せられたんだと思うんだよね。
そういえば、
こんな話を聞いたことがある。
運命の人は二人もいるってことを……
一人目は愛する事や失う事を教えてくれる人。
二人目は永遠の愛を教えてくれる人。
本当に二人いるのかは分からないけど、
私たちはお互いを『運命の人』だと確信する。
あの日、会えなかったけど……
時を経て再会し、こうしてまた結ばれた。
これを『運命』じゃないと否定する方が難しいよね。
今は『運命の人』だから一緒に居るんだと思えた。
「あ!そういえば……これ」
私は仁くんに自分達が付けていた南京錠を手渡す。
「え!これって?!」
仁くんは目を見開きながら、受け取った南京錠に驚いていた。
「もう逢うことないと思ったから、処分しようとしてたの。でも、よかった!捨てなくて」
「そっか、結空だったんだ……誰が外したんだろうと思ってたんだよ!」
仁くんは一度、プロポーズ丘公園に来ていた。
無数に付けられた南京錠を眺めていると、
自分達が付けた南京錠が何故かないことに気づく。
だけど、まさか結空が外していたとは知らず、
誰かのいたずらで外されたのだろうと思っていた。
「ごめんね、よかったらまた付けよう!」
「うん」
仁くんは南京錠のダイヤルを交際記念日の番号に回し、
高台近くの柵にまた南京錠を付けた。
「ずっと一緒に居ようね」
永遠の愛を再び誓い、寄り添う二人はニッコリと微笑んだ。
もし、この恋に名前をつけるなら……
きっと、聞くまでもなく、こうつけるだろう。


