練習で激しく動いた後に5分間だけ与えられる休憩時間。
ぐったりと横たわる部員たちがちらほら居る中、
チームメイトの小田 海斗《おだ かいと》が仁の隣へ迷わずやって来た。
海斗とはクラスも一緒で四六時中、共にする仲。
そして、
仁にとって数少ない大事な親友である。
ムードメーカー的存在な海斗は、
場を和ますことに長けており、
先輩後輩関係なく、誰にでもいじられる陽気な性格。
いつもチームやクラスを明るく照らしてくれるため、
仁は海斗に対して絶大な信頼を寄せていた。
そんな海斗が先程2人で仲良く話していた件について、
前触れもなしに触れてきた。
「珍しいな、お前が積極的に女の子と話しなんかするなんて。あれ?もしかして、好きだったりして?」
何かと感が冴える海斗が、
仁の表情から何やら心巧みに読み解こうとしている。
流石に今回ばかりは見逃してはくれなかったか。
ここは一回、しらばっくれることにしよう。
「えッ?!……んな、んなわけないし!」
誰が見ても恍《とぼ》けているのが丸分かりな態度に、
自分でもうんざりするぐらい嘘がつけないなんだと、
今、関心しちゃってる。
「ふーゥん。その感じ、好きなんだ。いっつも相手からでよ、自分から積極的に話すようなタイプじゃないからすぐ分かったわ」
さすが海斗。
こいつには嘘つけないぜ。
「やっぱり、バレた?」
「うん、バレバレ」
仁は学年一のイケメンではあるが、
チャラチャラはしていない。
好青年かつお人好し。
気取らないのが仁の魅力だと、
海斗が一番よく知っており、
自分から話しかける訳には理由があるに決まっているとお見通しだったのだ。
仁は今の気持ちを海斗に正直に話すことにしてみた。
「俺、結構前から結空ちゃんのこと気になってたんだよね。だから、その……今日連絡先聞いてくるわ」
緊張のせいか喉がやけに渇きだす。
「えッ!マジ?激アツじゃん!!頑張れよ!」
海斗は派手に喜び、
笑みをこぼしながら、
仁に続けてこう言った。
「そんで後で、俺にも結空ちゃんの番号教えてくれよ」
「はは、何でだよ!」
この何気ない冗談が緊張を少しだけほぐしてくれる。
仁は笑みを見せながら海斗の頭を軽くポンっと叩き、
再び練習へと戻って行った。


