忘れられない恋

その後、休憩時間。


仁の親友である小田 海斗《おだ かいと》は仁の隣に座り込むと、先程の私の件について触れた。



「珍しいな、お前が積極的に女の子と話しなんかすんなんて」


海斗はさっきのことが気になったのか、

興味津々に話しかけ、仁の反応を伺う。



「えッ?!……そぉ?」



「うん。いっつも相手からで、自分から積極的に話すようなタイプじゃないじゃん?」


何かと感が冴える海斗は仁の表情から心理を読み解こうとしている。


学年一のイケメンではあるが、チャラチャラしていない。

好青年かつお人好し。



気取らないのが一ノ瀬先輩の魅力だったのだ。



「そうだっけ?」



「うん」



「なあ、海斗?」


仁は自分の今の気持ちを、

海斗に話すことにしてみた。



「んーー?」



「俺、結空ちゃんのこと好きだわ」


海斗に打ち明ける。



「え?あの……さっきの子?」


海斗はバッシュの靴ひもを、

結び直すのを止め、目を丸くしていた。



「うん。それでさ……今日連絡先交換してみようと思う」


緊張のせいか喉が渇く。



「マジか?頑張れよ!まさか仁が人を好きになるとわ」


海斗は派手に喜んだ。



そして、

続けて笑みをこぼしながら、

仁に言う。



「そんで後で俺にも番号教えろよ」



「はは、何でだよ!」


仁は笑いながら、

海斗の頭を軽く叩いた。


緊張が少し解けたのだろうか。



海斗は仁の目の色が変わったのに、気づいた。