「プロポーズ丘公園」
だったら、こうしてはいられない。
すかさず、お店から出ると、ガンダ(ガンガンダッシュ)で近くのタクシー乗り場に駆け込んだ。
美優は俺が飛び出すように店から出るのを確認すると、結空が使っているポーチがふと頭に過《よ》ぎる。
「え!もしかして、さっきのポーチ君?!」
美優は慌てふためき、何やらこちらも大慌てで、休憩室に入って行った。
俺はタクシー乗り場に着くと、タクシーに急いで乗車する。
「はぁはぁはぁ……その先の公園まで!」
「了解致しました」
俺は乱れた呼吸で運転手に行き先を告げると、タクシーはゆったりと動き出した。
安全第一感強めのノロノロ運転のせいで、焦る気持ちを抑えることができない。
全く急ぐ気配を見せない運転手に嫌気がさし、急かすよう強い口調で言った。
「あの、急ぎ目で!!」
「了解致しました」
法定速度ギリギリを保ちながら、運転手は俺の言う通りスピードを上げてくれた。
時刻は午後8時。
辺りは真っ暗闇で、何だか居ない気がしてきて、不安がどんどん大きくなっていく。
頼む!お願いだから居てくれ!!
タクシーに揺られ数分後、微かな希望に賭けることしかできないまま、俺はプロポーズ丘公園に到着した。
「ありがとうございました。780円になります」
「お釣りはいいっす!」
俺は握りしめた千円札を運転手に渡すと、お釣りなんて貰わずに全力で走りだした。


