忘れられない恋

「そっか。でも、俺は結空ちゃんの笑ってるとこが見たいんだけどな」



「え……?」


私の頭は一瞬にして思考停止となり、

顔を火照らせ、気は動転していた。




私の笑っているとこが見たい?



それに突然の下の名前呼び。



そんなことを見つめて言われたら、

嬉しさの余り呼吸困難で、

倒れてしまうってば。



駄目だ!これ以上いたらキュン死してしまう。



私は小さくお辞儀をし、

その場から逃げるかのように走り去った。



すると、同級生の部員はさっきのことを見過ごしてはくれない。



「ちょっと!!!ゆあァ!何話してたの?!」


「ちょッ、ずるいんだけど!!!」


「何か凄い、一ノ瀬先輩が笑顔だったよ?」



同級生から集中砲火を浴びせられ、

切り出す言葉をうまく言うことができない。



体育館の壁に取り付けられた姿見で、私は何度も何度も自分の笑顔を再確認する。



「何も話してないってばァーー」


私は恥ずかしさの余り、ぎこちない笑顔を浮かべることしかできなかった。