忘れられない恋

「仁は絶対に松本さんと付き合った方がいいって。これ松本さん」 


海斗は俺達にスマホから本人の写真を見せ、職場の先輩を紹介してきた。



「へーー美人だね。一個上には全然見えない」


中島さんは写真を見て言うが、俺は反応しない。



正直言って興味がなかった。



「あれ?もしかしてタイプじゃない?」


中島さんは無反応な俺を見かねて、聞いてきた。



「え?まぁ……可愛いとは思うよ」



俺は急な問いに上から目線な返しになってしまう。



「だろ?『出会いがないから誰かいい人、紹介してくれ』って松本さんが言うもんだから!仕方がなく、可愛い松本さんをお前に紹介してやることにしたんだよ。有り難く思えよ!」



大きなお世話だ。



別に紹介してくれだなんて頼んでないし、むしろありがた迷惑。



俺はこの話がいつまで続くのかとたいぎく思えた。


「ちょっと可愛い可愛いって!もしかして毎日、松本さんのこと見て鼻の下、伸ばしてるんじゃないでしょうね?」



中島さんは頬を膨らませながら、海斗にヤキモチを妬いていた。



「いや……そんなことないって!」



「ホントォ?」


海斗と中島さんの絡みを見て、俺の顔から自然と笑みがこぼれる。



「ホントだって!なぁ?仁……あッそう言えば聞いてくれよ、莉緒。こいつさーー久しぶりに結空ちゃんに会ったんだってさ」



海斗は俺を指差しながら話題を変える姑息な真似にでる。



「おい!それ言うなって!」



俺は結空と会ったことをバカにされているようで嫌な顔になった。



「えッ!結空ちゃんって付き合ってた子でしょ?」


中島さんが興味津々で俺に尋ねる。



「そうそう!こいつら別れた四年前にさ、プロポーズ丘公園で会うことを約束してたのに逢えなかったんだよ。まぁ結局、結空ちゃんは来なかったみたいだし、仁の片想いで終わったんだよな。はは」



こいつ、ペラペラと本当のことを喋りやがって!



これ以上、傷穴を広げるなよ。




「へぇ〜〜約束か……ッ、え!もしかしてあの日?」



中島さんは四年前に雨でびしょ濡れになった俺に会った日を思い出す。



「うん?あーーあのびしょ濡れの日ね」



「待ってッ!あの日……」


中島さんは口に手をやり、俺は中島さんの顔色が変わることに違和感を感じた。



少しだけ空気が変わり始め、俺や海斗は変な胸騒ぎが波立つ。



「どおした?」



海斗は恐る恐る莉緒に尋ねた。



「あの日、私会ったよ!」



「え!誰に?」



俺も中島さんに恐る恐る尋ねた。