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関係者以外立ち入り禁止と書かれたドアの向こう。
休憩室で化粧直しをする私の姿。
誰かが入ってくる。
同僚の美優だ。
「あっ結空!今休憩?」
大きな荷物を両手いっぱいに抱え、何やら慌ただしくしている。
「うん。さっき休憩入ったとこ」
私は古くボロボロになったポーチから化粧品を探していた。
美優は私の使い古されたポーチを見て気になったのか、
荷物を机に下ろし、美優は口を開いた。
「そっか。てか、そろそろ変えたら?」
「うん?」
「ポーチ!ボロボロじゃん!」
「これ?いや、まだ使えるし……」
私は恥じらいを見せ、ポーチをそそくさしまった。
「まだ高校の時に付き合ってた彼が忘れられない?」
「いや、そんなんじゃなくて……ただ気にいってるだけだから」
古くボロボロになったポーチは高校時代に、仁くんが誕生日プレゼントでくれた物だった。
もう、かれこれ五年は使い込んでいるだろうか。
私は変えずに今も愛用していた。
「ふーん?じゃあ、よっぽどだ!私も昨日、休みじゃなかったらポーチ君に会えてたのにーー」
「え?別に会わなくていいよ。てか、その話し終わり!」
私は嫌な顔をする。
「ごめんごめん。あ!そう言えばさ、さっき店長と何話してたの?」
不安な様子で私に尋ねる。
「え!」
「店長、凄い顔して驚いてたじゃん。凄い気になったから何だろうと思って」
私は数時間前に、店長と話した内容を美優に教えた。
「ちょっと!それホントォ!?急すぎない?」
まだ美優に言っていなかったから、美優も店長同様、凄く驚いている。
「うん、黙っててごめんね」
私たちは時間の許す限り話しをする。
美優はとても寂しそうだった。


