忘れられない恋

「はい。返してくだァ……」



「ワァッッ!!!」


突然、一ノ瀬先輩は私にボールを当てる振りをして驚かしてきたのだ。



「キャアッ!!!」


私は呆然とし、

ただただ一ノ瀬先輩の顔を見つめている。


え?何、今の?


急な出来事に対応できるわけがない。


それどこか、私の驚いた顔を見て一ノ瀬先輩はクスクスと笑っていた。



「え?……フフッ」


状況を飲み込めずにいたが、

何だか可笑しくなってきて、

いつの間にか私まで釣られて笑っている。



「アッ!!やっと笑った。


いつも笑顔じゃないからさ、バスケ楽しくないのかなって心配してたんだよ」


一ノ瀬先輩は、私にそっとボールを手渡す。



「え?あっ……ありがとうございます。あの……練習について行くのに必死で」