忘れられない恋

「え!あーー行くわけないじゃん!」


結空は落ち着かない様子で俺に嘘をついた。


もちろん、俺はそんなこと知らない。



あの日、プロポーズ丘公園で待ってたなんて、ダサくて惨めで言えないのだろう。




「やっぱりそうだよね……俺も……行ってないからさ!もう昔のことだもんね」


俺は顔を曇らせながら、バレないように嘘をつく。



正直言って辛かった。


来てないと言われ、むしろ行くわけないじゃんと言われ、俺は傷ついた。



「うん。時間も経てば気持ちなんて変わるよ、ふふ」


結空は苦笑いでその場をやり切ろうとする。


気持ちが変わったんだ。



約束したのに、時間が経てば好きという気持ちは薄まっていくんだね?



俺はあの日、結空に逢えることをどれだけ待ち望んでいたか。



それなのに、結空は違ったんだね。



俺は肩をなで肩にしながら、しょんぼりとしていた。



「で、あの……仁くんは今いるの?」



「何が?」



「彼女さん」



「え!あーー彼女いるよ」



何か唐突にくる怒りが見栄を張り、

平気で嘘をついてしまう。


今、俺に彼女なんていない。


結空は俺の言葉を聞き、何故か肩を落としていた。



「そっか……仁くんの彼女さんだから綺麗でモデルさんみたいな人なんだろうね」



「う、うん?ま、そうだよ……んなことより、俺より結空こそどうなんだよ」



俺はもの凄く気になった。


彼女の容姿を知っているかのような言い方に。



「え!私?いないよ……でも、つい最近別れたんだ」



つい最近……



もしかして、そいつのことが好きになって、来なかったんだな。



間違った推測を俺は始めていた。



「そっか……」



目を逸らす二人から気まずさが漂い始め、沈黙が続いていく。


この空気に耐えれなくなった結空は、空気を変えようと口を開く。



「あれから大変だったんだよね。就職して……一人暮らして」



「あッそうだよね……あれからお母さんとは?」



「もう全然会ってないよ。お父さんは『いつでも帰っておいで』って言ってくれてるけど私は今のままでいいから」



「結空は相変わらず凄いね。いろいろ頑張ってて」



「そうかな?」



「うん」


二人はしばらく高校時代の話しや卒業してからの話しで盛り上がった。



というか、あの日や最近の話は避けたほうがいいと判断した。