忘れられない恋

数分後、

いつものようにボールが足に当たり、

ボールが遠くへと転がっていく。



はぁ、まただ……


ボールを拾いに追いかけに行った時だった。


私のボールがゆっくりと一ノ瀬先輩の足許へと辿り着いた。


あっヤバい……よりによって何で一ノ瀬先輩のところに行くかな。



一ノ瀬先輩はボールを拾い上げ、

転がってきた方に目を向けると、

私は一ノ瀬先輩と完全に目と目が合っている。


今世紀最大のピンチ到来。


それ私のじゃありませんアピールをしようかと思ったりもしたけど、

どうやら無理っぽい。

私は時間が止まったかのように、

ただ静止するだけだった。



ヤバい……何て言おう?

よりによって一ノ瀬先輩の許に行くなんて……ついてない。



「すみません。ボール……」



下手くそな上に迷惑までかけるなんて、

恥ずかしくてこの空間に居ることが耐えがたい。


いっそのこと辞めてしまった方が先輩のためではないか、

そう考えもした。



「これ君の?」



ボールを持ったまま、

一ノ瀬先輩が優しく私に尋ねる。



「はい……」
 


「君、名前なんつうの?」



「え?木栖ですけど……」



「きすみ?下は?」



何故、名前を聞いてくるのか、

謎に怖いこの時間が心臓に悪い。

もしかして、

センスのない私を見て嫌気さしてる?的な感じなのかな?



「結空です。あのボールを……」




「あっボール?返して欲しい?」



名前を聞かれて戸惑う私に、

一ノ瀬先輩は何やら気さくな笑顔を見せてくれた。



キャッ♡

笑顔が眩しくて、いつ見てもカッコいい。

ついついその笑顔に私は見惚れてしまっていて、

本日の最大のミッション、

ボール奪還任務を忘れてしまっている。


いかんいかん。



私はボールを返してもらうため、

手を前にゆっくりと差し出した。