忘れられない恋


胸が騒ぎ、不安が募る。




辺りが暗くなったプロポーズ丘公園に着いた時、静寂さと冷たい雨と共に悟った。



間に合わなかったと。




プロポーズ丘公園には誰も居なかったのだ。



俺は絶望感から膝から崩れるように座り込み、地面を何回も叩いた。




どれだけ叩いたって変わることのない現実に、

どれだけ汚れたって変わらないこの気持ちに、

悔しさを覚える。





結空に逢いたい。





だけど、運命は時に残酷で回り道をするしかないと教えてくれる。



俺は今日という残酷な日を決して忘れることができなかった。



びしょ濡れになりながら、俺はプロポーズ丘公園の下り坂を下り、実家へと一先ず帰ることにした。



結空は来たのかな?

待ってくれていたのかな?



そうやって、結空のことだけを考えながら、下り坂を下っていく。




すると、聞き覚えのある女性が俺に話しかけてきた。




「え!一ノ瀬くん?!」




顔を前に向けると、そこには懐かしの顔が目に映り込む。




「な、中島さん?!」



俺がびっくりとする中、駆け足で傘を指したまま、俺が濡れないようにと、傘の中へ入れてくれた。



「どぉしたの?びしょ濡れで、風邪ひいちゃうよ!」




「あ……ちょっとね、傘忘れちゃって。天気予報では言ってなかったんだけどなぁ」




びしょ濡れになった自分に羞恥心を覚えながら、距離の近さに戸惑っていた。



「もォ〜!!乾くかなぁ〜?」



中島さんは鞄からハンカチを取り出し、俺の濡れた髪や顔を拭いてくれる。



ハンカチから甘酸っぱい香り。



俺は子どもなのかというぐらい、中島さんにお世話を焼いてることに申し訳なく思いながら、されるがままだった。


「ありがと」



「で?何で一ノ瀬くんがこんなとこにいんの?」



「いや、久しぶりに地元帰ってきたからさ、散歩的な?」



「だからって、びしょ濡れになるまで散歩する、普通?」



「いや……でも、こうやって久しぶりに中島さんにも会えたワケだし、雨最高……なんちゃって」




結空と逢えずに落ち込んでます。

落ち込んでたらびしょ濡れになりました。

なんて、中島さんには言えるワケがなく、俺は悲しいことがあったなんて悟られないように、空元気で対応した。



「ふふ、相変わらず一ノ瀬くん見てると面白いや」



中島さんはクスッと笑い、俺を何の嫌な顔見せず、その後、家まで送り届けてくれた。


本来なら男の俺がする立場なのに。



情けない。



でも、中島さんと話しをすることで何だか今日結空と逢えなかった寂しさが少しだけ和らいだ気がした。