忘れられない恋

「落ち込むよねーー」


美優が仕事中、元気がない私を気にかけてくれる。



「……」


私からの返答は返ってこないが、美優はタイピングをしながら、また口を開いた。



「まさか……彼女作ってたとわ」



美優は呆れながら、私の顔を見る。



「美優?」



「うん?」



「私ってさ……そんな魅力ないかな?」



小さくため息を吐きながら、私は自分に自信を無くしていた。


まるで、抜け殻になったみたいに、動くことがだるく感じる。



「はあ?いきなりどうしたの?」



「仁くんの彼女、大人びて綺麗な人だったからさ。そりゃ、私なんか忘れてしまうよね?って……はァあ」



「いや、何言ってんの?結空には他の人にはない魅力を持ってるって」



美優は作業を止め、これ以上意気消沈しきった私を悪化させないように慰める。



「たとえば?」



「えッ……たとえば?それは……まぁ、居心地の良さとか!一緒にいて落ち着くよね、ママみたいで」



美優にとって何の悪気もない発言だとしても、今の私にとったら、悪意に感じる。



私は持っていたボールペンをカチカチさせながら、美優に対して不気味な笑みを見せた。



「美優?刺すよ?」



美優は誤解を招いた発言に気づいたのか、焦り散らかしていた。



「嘘嘘ッ冗談だってばーー。もォ〜落ち込むのは分かるけど元気出しなッ!いつまでも引きずったって仕方ないんだから」



「分かってる!分ってるけどさ、急には元気出ないよ」



「そりゃあ、そうだけど……いつまでも前の男のこと考えてても仕方ないないからさ、この際きっぱり忘れなッ!」



「はァアーー。だよね……」



「うん。終わったらご飯でも食べに行こう!また話、聞いてあげるからさ、ね?」




「うん」


私は仁くんのことを忘れようと、しばらく仕事に専念することにした。


きっと時間が経てば、この傷ついた気持ちも落ち着ついてくれるはずだと信じて。