少し意地悪っぽく急かす。

 すると静流は、耳元で私の名前を呼んだ。

「香、こっち向いて。」

 いつもの声……に、甘さが追加されている言葉。

 バックハグ状態だから、向くのはちょっと恥ずかしかったりする。

 でも、返事を知りたかった私はゆっくりと静流のほうに向き直る。

 その途端……唇に柔らかい感触が走った。

「……これが俺の返事。離すつもりなんてないから。」

「そっか。それじゃ、私も頑張ってみるかな。」

 恋なんて、興味ない。どうでもいいし、するだけ無駄。

 ……だけど時には、必要なのかもしれないなぁなんて。

 静流の言葉に安心した私は、ふっと笑みを浮かべる。

「静流をもっと惚れさせる事。」

 こういうのは、徹底的にしなきゃ面白くない。

 そんな私の言葉を聞いた静流は、一瞬きょとんとするもすぐに笑みを見せる。

「ん。楽しみにしてる。」

 ……こういうノリでも付き合ってくれる静流は、やっぱり好きだ。

 私はその思いを抱きながら、これからの静流との関係を楽しみにしていた。

【FIN】