甘くて優しい青春恋物語 ~初恋ジューンブライドの誓いは甘酸っぱい~

 ……その後、ガチャリと少し適当に受話器を置いて。

「ちょっと用事ができたからあたしは抜けるけど……どうせ、香ちゃんの傍にいるでしょ。」

「分かってんならいちいち聞くな。」

「まぁあたし的には問題ないけど。それで成績落ちたら知らないからね。」

 姉貴はそれだけ言って、足早に保健室から出て行ってしまった。

 忙しい奴だな……今に始まった事じゃないけど。

 幸いな事は、こういう時養護教諭が姉だったら融通が利くってところか。

 どこかでそんな思いを馳せながら、香へと視線を向ける。

 その時に香もゆっくりと、おぼろげな様子で目を覚ました。

「う……わ、たし……何があって……ん、しず、る?」

「香、まだ寝とけ。」

「いや……大丈夫。」

「大丈夫じゃないから俺は言ってる。いいからもう少し休んどけ。」

 子供をあやすような声色で、起き上がろうとした香をもう一度寝かせる。

 今の香はいつもの気が強い姉御肌性格はなく、しおらしい少し落ち込んでいる珍しい性格が出ていた。

 それくらい、あの女たちがした仕打ちは酷いものだったのか。