そう言って、貼り付けたような笑顔でこっちに手を伸ばしてくる女子生徒。

 俺の答えは決まっている。

 ……だから、その手を振り払った。

「俺はあんたのことも香を傷つけた事も、分かりたくない。」

「……今はそれでもいいよ。折羽さんよりもわたしのほうが、絶対良いから。後悔はさせないから、今は分かってくれなくても付き合ってほしいの。」

 そんな馬鹿げた言葉に、俺の中の何かが切れた音がした。

 ……何が、香よりもいいんだ。

 ――どうして、そう言うんだ。

「そうやって他人を引き合いに出す時点で、俺はあんたと付き合うなんて考えられないから。俺には香しかいないし、他の奴なんて考えたくもない。というか俺、あんたみたいな女が一番嫌いだから。」

 今やっと思い出した。この女は数日前に俺に告白してきた奴。

 俺は自分の思いをそのまま伝えたから、諦めてくれた……って勝手に思っていた。

 ……けどそんな事なかった。この女は俺が思っていたよりも、ずっと厄介で面倒な人間だった。

 平気で香のことを傷つけて、馬鹿にする……最低な、人間。