「そろそろ戻るね。」

 私は最後にそれだけを言い残して、屋上から出て行った。

 ……静流のあの目は、きっと本気だ。

 いつもだるそうにしているのに、あそこまで熱心に話す静流の様子からもそれは読み取れる。

 だけど私は、例え静流であっても好きになるなんて考えられない。

 まさか急にぶっこんでくるとは、全く思ってなかったけど……。

『香、好きだ。』

 静流のことは仲のいい男友達。それ以上でもそれ以下でも、ない。

 ……まさか、ジューンブライドコンテストに向けて告ってきた?

 一瞬そんな思いが脳裏をよぎったけど、すぐに否定する。

 あの静流にとって、そんなわけない。静流は私同様にイベント事が嫌いだから。

 気まぐれ。今の私はそう結論付ける事しかできない。

 ――でもこの日以来、より面倒な非日常へと変わっていった。