甘くて優しい青春恋物語 ~初恋ジューンブライドの誓いは甘酸っぱい~

「ちょっと空音、引っ張らないでってば……。」

 ……なんか、彼女ちゃんが不憫になってきた。

 どうせ高野はあの彼女ちゃんだけには良い顔をしているんだろう。いかにも、腹黒男がやりそうな手口。

 そういえば彼女ちゃん、ジューンブライドコンテストの機材持ってたな……。

 片手に収まるくらいの袋を手から下げていた事を思い出し、一瞬振り返る。

 ……仲、良いな。

 高野と彼女ちゃんは幸せそうに笑い合っていて、きっとあの二人もコンテストに出るんだろうと予測する。

 まぁ……私には関係ないけど。

 上辺だけでは、そう思っていた。

 でも何故かこの時の私の頭には、静流と『羨ましい』なんて言う気持ちが浮かんでいた。



 今日も今日とて、静流と一緒にお昼を過ごす。

 うー、まだ六月だってのに暑い……。

 しかも梅雨が明けていないから、じめじめしていて気持ち悪い。

 カンカン照りと言わんばかりの日光を手で遮りながら、お弁当を食べ進める。

「……なぁ、香。」

「ん? なーに静流。」

 もぐもぐとほうれん草を食べていた時、おもむろに静流から声をかけられた。