「立ち合いというならば、両国にとって公平でなければならないはずです。そのお役目、わたくしにも務めさせていただけませんか?」
「あなたは……?」

 それは騒ぎを聞きつけてきた、レミュールの姿だった。後ろにはマーシャもいる。

「レミュール・ホールディ公爵令嬢と申しますわ。この離宮に残る聖女候補のひとり……というのも今となってはおこがましいことかも知れませんが。とにかく、セシリーの存在は我が国に……いえ、わたくしたちにとって無くてはならないもの。そちら側の裁定だけで黙ってお渡しするわけにはいかないのです」

 きつい眼差しで見つめてくるレミュールに、レオリンは肩を竦めて頷く。

「いいでしょう……では私たちが立会人となり、勝敗を判断します。庭内から一歩でも出れば場外として失格。意識を失い十秒以上立ち上がれなかった場合も同様。おふたりとも、あの腕輪を付けていただこう……それがもし破壊された場合も敗北とする」

 レオリンが指示したのは、ジェラルドがこのために部下に用意させた『決闘の腕輪』という魔道具だ。その効果は、着用者の身を魔力の鎧で覆う同時に、使用者自身が自発的に魔法を使えなくするというもの。一定以上の魔力の鎧が損傷を受ければ、自動的に破壊される造りになっているのだという。