ラナは光物が好きで、しかも自ら作る方に手を出すような貴族の女性としては相当に変わり者で、あろうことか俺までその影響を受けることになってしまった。何にでも必死に打ち込み、楽しそうに笑うラナは俺の塞いでいた性格をも少しずつ変えてゆき、言葉を交わす友人も増えたが……彼女の隣が一番心地よいことは変わらず、大抵の時間は一緒に過ごしていた。

『実はね私……将来は国家に所属しないで家を出て、支援が届かないような町とかを回って困ってる人たちのために力を使いたいんだ』 

 時折将来の話を彼女は、希望に満ちた瞳で語る。まだこの時、大災厄の訪れの予兆を俺たちは知らなかった。そして聖女を血を継ぐ家柄の中でも比較的低い地位の者として生まれた彼女は、自分が将来聖女候補のひとりに選ばれることなど、欠片も考えていなかったようだった。

 宮廷魔術師に教わった素地と、本人の研鑽のかいもあって、二年次の前期彼女の成績は学内で三本の指に入る好位置を保持し続けていた。俺が一学年の後期試験で首位を取り、王族としての面目を保てたのも、そんな彼女に追いつき追い越そうと必死に学んだおかげだ。