頼りなさげに響いたノック音に、私は我に返ると書斎の扉を開けた。
 そこでは娘が気づかわしそうな瞳で、こちらを見ている。

「お父様大丈夫……? ひどい顔してる。ごめんなさい、私が色々悩ませたからよね……」
「違うよセシリー。違うんだ……」

 辛そうな目で見つめるセシリーを私はそっと抱きしめた。記憶の中の娘はまだ、両腕に収まるくらいの、ほんの小さい子供だったはずなのに……。あっという間に大きくなってしまった。

 本来なら、一番に成長を喜ぶべきは自分であるはずなのに……我ながらこれでは父親失格だと自嘲してしまう。身勝手な想いだとは分かっている。それでも娘が自分の両手の中にずっと収まって、守らせてくれたらと願わずにはいられないのだ。

 もう娘が自分の庇護を必要としなくなり始めているのはわかっている。しかしどうしても私は、本人に嫌われようが……誰に笑われ(さげす)まれようが、娘を力の限り守ると誓った。サラと、彼女の分まで娘の幸せを見届けると約束した時に。