「どういう意味?」
「いつもと違った行動をしていたり、おかしな言動はあったり、していないでしょうか」
「私には、まずエイラがこんなことを言うのがびっくりだけど……でも、特には思い付かないかな」

 そもそも最近セシリーは騎士団のお世話で出ずっぱりだから、エイラと過ごすことは少ない。不審な様子が気になるならば、まず尋ねるべきは同僚の方だろうが、彼女がそれをを分かっていないとも思えない。きっと何も無かったのだ。

「そうですわよね。不安を煽るようなことを言って申し訳ございません」
「気にしないで。うん……私ももしそんなことがあったら、ちゃんと言うから。私とエイラの仲だもんね」

 セシリーはエイラの細くしなやかな手を握る。ひんやりしていて気持ちいいこの手で、昔はよくセシリーの頭を撫でてくれたものだ。最近は子供扱いしてくれなくなったのが、なんとも寂しい。

「あらあら、嬉しいこと。でも御嬢様、人の心配ばかりして、あまりご無理はなさらないで下さいね。いくらお父上のご指示だとはいえ、本来貴族となった御嬢様が、私たちのような使用人みたいなことをなさる必要はないのですから」
「そうかもしれないけど……。でも私、あそこで働くのは楽しいよ。作ったご飯を美味しいって言ってくれたり、頼まれごとをしてありがとうって感謝されたり。もし働くのなら、やっぱりお金のためだけじゃなくて、必要とされたいじゃない」