そして、もう一つは成長するにつれ、人を疑うということを覚え始めてしまったこと。

 幼い頃は両親やメイアナ、周囲の人々たちの期待に答えることで得る賞賛が自分を満たしていて、それを信じ前に進むことができた。しかし成長し、多くの人と関わり合いをもつにつれ……本当にそれで、そのままでいて正しいのかを迷うようになった。

(家族はいい。だが、他の人々は本心から、私自身を必要としてくれているのだろうか?)

 季節が巡る度に少しずつ……貴族としての務めが増え、自分の倍以上にもなる年齢の人間と接することも多く増えた。そんな人ほど、表情に笑顔を貼り付け私のような少年に媚びへつらう。

 毎日のように続くそれは、すぐに私に違和感をもたらし、そしていつしか気付いてしまった。あれは仮面なのだと……。幼い頃に連れられた舞台で道化が被っていた、笑顔のマスク。しかし、その奥の瞳は冷徹な計算に満ちていた。

 そうと知った私は家族以外は誰も信じなくなっていきました。他人が私を利用しようとするのであれば、こちらもそうと見越して接するまで。純粋な願いは心の奥底へ追いやられ、私は常に冷めた目で他者を見るようになってしまった。