これでまた、リュアンの新たな一面を知れた。なんやかんや差し入れでもすれば、ちょっとは印象も好転するだろう。父の頼み事から始まり、ティシエルに振り回されて結構気疲れしたが、全体的に悪くはない一日だったように思う。

 しばしの間、ゆったりとした時間が流れ……ふたりの間の緊張も緩んだ。
 コーヒーにミルクを入れてくるくるとかき混ぜながら、セシリーはぼんやりとリュアンの細面を見つめてしまう。

(真面目で、意地っ張りで、恥ずかしがり屋で……内面は私たちとそう変わらないのに――この人は本当に、なんて美しいんだろう)

 まるで一服の絵画のに描かれたように、リュアンはセシリーの視界の中に収まっている。しっとりと輝く黒髪、白磁のようにきめ細やかな白い肌。すっと高い鼻梁(びりょう)の下には桜色をした薄い唇が品よく伸びていて、まるで自分たちとは別の存在のようだ。

 もはや羨ましさすら感じる必要も無い、この世に存在することを感謝したくなる美貌を前にして、セシリーはしばし意識を手放していた。