今は魔王の手も借りたい。~転生幼女のほのぼのチートスローライフ~

 なぜ、転生したのがプレイヤーの数だけ存在する主人公ではなく、既にゲーム内でキャラクターとして成立していたエステルだったのだろう、と。

 もともと聖女だった『エステル』の身体を奪ったのかもしれないと思うと、やるせない気持ちになるのだった。

「エステル?」

 レスターに顔を覗き込まれ、エステルはさりげなく視線を逸らした。

「お……お散歩してたんだよ」

「散歩? お兄ちゃんになにも言わないで?」

「ごめんなさい……」

 下手にごまかすのはやめ、しおらしく頭を下げて謝る。

(私もゲーム通りにお兄ちゃんのひとつ年下だったら、もっとうまく言い訳できたのに)