今は魔王の手も借りたい。~転生幼女のほのぼのチートスローライフ~

ダンジョンを出たエステルは、村と山を繋ぐ道の真ん中で仁王立ちになっている兄を見て、しまったと気まずい顔をしながら足を止めた。

「こんな朝早くにどこへ行ってたんだ、エステル」

 血の繋がらない兄の名はレスターという。

 いずれ勇者となる物語の主人公だ。

デフォルト名は『ヤマト』だったはずだが、どうもこの世界では違うらしい。

すっきりと短い黒髪と紺色の瞳をしていて、穏やかな顔つきをしている。

見た目にこれといった大きな特徴がないのは、プレイヤーが主人公に自己投影しやすいよう配慮しているからだろう。

彼を前にすると、エステルはいつも申し訳ない気持ちになる。