手が空いたエステルは小走りでゼファーのもとへ向かうと、背伸びをして顔を覗き込んだ。

(涼しい顔、ってこういう顔のことを言うのかな)

 少し日に焼けた腕をむき出しにしたエステルと違い、ゼファーは着込んでいると言っていいほど厚着だ。

 それなのにじりじり刺す日差しをまったく気にしていない。

「どうして涼しいの? 魔法?」

(もしそうなら、私にもかけてくれないかなぁ)

 エステルは自身の背中に汗が伝うのを感じながら期待したが、ゼファーは鬱陶しそうに顔を背けただけだった。

 そこに足音が近づく。

「またエステルをいじめてるのか?」

 過保護な兄、レスターだ。