独学で知識を仕入れたレナーテと違い、彼らは人型の魔族を『ちょっと耳が長い人』くらいにしか受け取らなかったからだ。

 この村によそからの移住者が少なくなかったのも大きいのだろう。

 ゲームの公式設定としてエステルは拾われて育てられた子だし、親の姿が見当たらないほかの幼馴染たちもそういう処理がされているようだ。

 こういう細かい設定の部分はどうも甘い。

 エステルは小さな身体でひと抱えもある薪を懸命に運び、倉庫に入れてから額の汗をぬぐった。

「今やっておかなきゃ、寒い冬を過ごすことになるんだよ」

「私を人間と同様に扱うな」

「……じゃあ今も暑くないの?」