メイナ村の裏手にあるリンバーグ山には、まだ誰も知らない洞窟(ダンジョン)が存在している。

 毛のない皮膜を広げて暗闇を駆ける魔物や、ひと抱えほどもある岩に擬態した魔物、そしてどろりと粘着質な魔物と、様々な魔物が生息している危険な場所だ。

 そんな場所だというのに、頼りない明かりを灯したランタンを手にし、とことこと歩く小さな姿があった。

(この世界がシンボルエンカウントを採用していてよかった)

 やわらかな頬に小さな手。ぱっちりと愛らしい紫水晶のような瞳をした、およそ七歳ほどの子供だ。

少女が洞窟の奥へと軽快に足を進めるたび、ミルキーなラベンダーカラーの髪が肩の上でちょんと跳ねる。