リリィ=ブランシュはスローライフを満喫したい!~追放された悪役令嬢ですが、なぜか皇太子の胃袋をつかんでしまったようです~

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「――お父様もお体にはくれぐれもお気をつけて。あなたの娘、リリィ=ブランシュより、っと。これでよし」

 ペンを置いて「うーん」と伸びをした。午前中の間ずっと、三階の自室横にある書斎にこもって書類作りなどの事務仕事をしていた。
 最後に父親と家令、それぞれにあてた手紙を書いて終了だ。ベルナール家からの配給便が届いたときにはお礼一緒に近況をしたためることにしている。

 あれから父親の具合はずいぶんよくなったそうだ。心労の原因が大きく減ったためだろう。リリィは舞踏会で王妃と謁見できてよかったと思い返す。

 舞踏会の夜、ダンスの一曲目が済んですぐに王妃の従僕がリリィを呼びに来た。そこでアルと別れリリィは単身別室へと向かった。
 程なくして王妃が姿を現し、緊張しながらカーテシーを行ってすぐ。聞こえてきた言葉に耳を疑った。

『こたびはジョナスが大変失礼をいたしました』

 まさか王妃直々に謝罪を受けるなんて思いもよらない。言葉を失うリリィに王妃は我が子である第四王子の素行の悪さが耳に届いていたと語った。
 何度も苦言を呈していたが改善は見られず、とうとう許嫁を勝手に解消して、堂々と別の令嬢と遊び歩いていることが国王陛下の耳にも届いたらしい。

 まだ本人には伝えていないが、ジョナスをしばらく他国へ修業に出すことに決まったと言った。
 驚きすぎて短い返事をするのもやっとだったが、どうにか気力を振り絞り、気になっていたことを尋ねる。

『あのうわさのことは……』
『うわさ? さあ、いったいどれのことかしら?』
『え?』
『うわさなど、この社交界では常に星の数ほど飛び交っております。毒にも薬にもならないものにいちいち気を取られていては、国を安寧に導くことはできないのですよ』

 どこかで聞いたセリフに、まさかと思う。その〝まさか〟は、王妃の次の言葉で確信に変わる。

『リリィ=ブランシュ・ル・ベルナール嬢、アルフレッド皇太子殿下に感謝なさい』

 翌日、リリィはマノンを連れて辺境の屋敷へと戻った。