「あなたに嫌われるのは耐えがたいですね。どうしたら許してもらえますか、マイレディ」
彼の襟もとのピンブローチが目に入った途端、心臓が止まりそうになった。
鷹の意匠――隣国、グラン帝国のものだ。
グラン帝国はクレマン王国とはけた違いの大国で、この大陸の半分を占めている。クレマン王国とは同盟を結んでいるが、力関係は歴然。属国一歩手前というところだ。
グラン帝国で、目の前の彼と同じ年頃の皇族で思い当たる人物といえば――。
「ア……アルフレッド皇太子殿下」
目の前の薄い唇が、弧を描くように持ち上がる。
「アルでいいと言いましたよね」
「……っ!」
嘘でしょう! アルが皇太子殿下⁉
頭がくらりとして、足がよろめいた。
「大丈夫ですか? 人に酔ったのかもしれませんね。少し休みましょう」
アルはリリィの手を自分の腕に添えさせ歩きだす。
「お待ちください!」
突然声を上げたイレーヌに足を止める。振り返った途端、彼女が勢いよく話し始めた。
「恐れながらっ、皇太子殿下! その女はおやめになった方がよろしいかと存じます!」
思わずぎょっとした。まさか他国の皇太子を呼び止めた上に、相手からの言葉も待たずに自分の言いたいことだけを口にするなんて。マナー違反どころか、不敬だと罰せられてもおかしくない。
思わず隣を振り仰いだら、今度はジョナスの声がした。
「イレーヌ嬢の言う通りです。アルフレッド殿はその女に騙されていらっしゃるのです」
さっきとは違う意味でめまいがした。よもや王子が自国の令嬢の非礼を叱るどころか、後押しするようなことを言うとは。
彼の襟もとのピンブローチが目に入った途端、心臓が止まりそうになった。
鷹の意匠――隣国、グラン帝国のものだ。
グラン帝国はクレマン王国とはけた違いの大国で、この大陸の半分を占めている。クレマン王国とは同盟を結んでいるが、力関係は歴然。属国一歩手前というところだ。
グラン帝国で、目の前の彼と同じ年頃の皇族で思い当たる人物といえば――。
「ア……アルフレッド皇太子殿下」
目の前の薄い唇が、弧を描くように持ち上がる。
「アルでいいと言いましたよね」
「……っ!」
嘘でしょう! アルが皇太子殿下⁉
頭がくらりとして、足がよろめいた。
「大丈夫ですか? 人に酔ったのかもしれませんね。少し休みましょう」
アルはリリィの手を自分の腕に添えさせ歩きだす。
「お待ちください!」
突然声を上げたイレーヌに足を止める。振り返った途端、彼女が勢いよく話し始めた。
「恐れながらっ、皇太子殿下! その女はおやめになった方がよろしいかと存じます!」
思わずぎょっとした。まさか他国の皇太子を呼び止めた上に、相手からの言葉も待たずに自分の言いたいことだけを口にするなんて。マナー違反どころか、不敬だと罰せられてもおかしくない。
思わず隣を振り仰いだら、今度はジョナスの声がした。
「イレーヌ嬢の言う通りです。アルフレッド殿はその女に騙されていらっしゃるのです」
さっきとは違う意味でめまいがした。よもや王子が自国の令嬢の非礼を叱るどころか、後押しするようなことを言うとは。



