「ちょっ、お待ちなさい! わたくしはまだいいと言っておりませんわよ!」
イレーヌの執拗な絡みにため息をつきそうになる。大体同じ伯爵家という点で身分は同等なのだ。退出するのにそちらの許可を得る必要もない。
そっと瞳を閉じて鼻から息を吸い込むと、お腹に力を入れて背筋を伸ばした。ゆっくりとまぶたを開いて、まっすぐにイレーヌを見つめる。
「な、なんですの、なにか文句でも……っ」
最上級の微笑みを浮かべたら、イレーヌが息をのんだ。
「わたくし、人様のものにまったく興味はございませんの。欲しいものを手に入れるために手段を選ばず誰かを貶めたりするような浅ましい人間にはなりたくありませんので」
「な……っ」
「イレーヌ・ル・クレイモン伯爵令嬢。わたくしにはそんなことより大事なものがございますからどうぞご安心なさってくださいませ」
許嫁を取られた仕返しをするくらいなら、畑で農作物を作った方がよっぽど生産性があるというものだ。
「ではこれで失礼いたしますわね。ごきげんよう」
顔を真っ赤にしてふるふると肩を震わせるイレーヌに背を向けて、その場を立ち去ろうとしたところで、声が割り込んできた。
「なんの騒ぎだ」
「ジョナス殿下!」
イレーヌが目を輝かせた。
「またおまえか、リリィ=ブランシュ・ル・ベルナール伯爵令嬢。なぜここにいる」
「わたくしは――」
「殿下! わたくし、リリィ=ブランシュ嬢がおひとりでお寂しそうでしたのでお声をおかけいたしましたの。過去のことは水に流して、昔のように仲良くしていただこうと思ったのに、冷たく断られてしまいましたわ」
「どういうことだ。説明せよ」
イレーヌの執拗な絡みにため息をつきそうになる。大体同じ伯爵家という点で身分は同等なのだ。退出するのにそちらの許可を得る必要もない。
そっと瞳を閉じて鼻から息を吸い込むと、お腹に力を入れて背筋を伸ばした。ゆっくりとまぶたを開いて、まっすぐにイレーヌを見つめる。
「な、なんですの、なにか文句でも……っ」
最上級の微笑みを浮かべたら、イレーヌが息をのんだ。
「わたくし、人様のものにまったく興味はございませんの。欲しいものを手に入れるために手段を選ばず誰かを貶めたりするような浅ましい人間にはなりたくありませんので」
「な……っ」
「イレーヌ・ル・クレイモン伯爵令嬢。わたくしにはそんなことより大事なものがございますからどうぞご安心なさってくださいませ」
許嫁を取られた仕返しをするくらいなら、畑で農作物を作った方がよっぽど生産性があるというものだ。
「ではこれで失礼いたしますわね。ごきげんよう」
顔を真っ赤にしてふるふると肩を震わせるイレーヌに背を向けて、その場を立ち去ろうとしたところで、声が割り込んできた。
「なんの騒ぎだ」
「ジョナス殿下!」
イレーヌが目を輝かせた。
「またおまえか、リリィ=ブランシュ・ル・ベルナール伯爵令嬢。なぜここにいる」
「わたくしは――」
「殿下! わたくし、リリィ=ブランシュ嬢がおひとりでお寂しそうでしたのでお声をおかけいたしましたの。過去のことは水に流して、昔のように仲良くしていただこうと思ったのに、冷たく断られてしまいましたわ」
「どういうことだ。説明せよ」



