持ってきた料理が残りわずかになったころ、デザートがあることを思い出した。マノンが取りに行ってくると言い、屋敷へ戻っていった。
「デザートまで入るかしら」
「俺は余裕だぜ!」
ジャンは自信満々だが、ぽっこりしたお腹を見たら、あまり信用できない。余ったものは包んで持って帰らせてあげればいいかと思った。彼の妹が甘いものがお土産にあるととても喜ぶそうだ。
「そういえば、足はちゃんと治ったのか?」
「はい。お陰様で」
「そうか、それはよかった。それなら俺は明日にはここを立とうと思う」
「そう、なのですね」
一抹の寂しさが胸をかすめる。滞在は五日間ほどだったが、彼はすぐに馴染み、一緒に食事をしたりささいや会話をしたりするのも楽しかった。
だが最初に約束した通り、これ以上彼を引き留めてはいけない。
ニワトリ小屋も完成したし、足も治った。新しい護衛はまだ見つかっていないが、伯爵家から誰か寄こしてもらうよう頼んである。
「わたくしのことならご心配ありませんわ。ほら、この通り」
すっくと立ちあがって、カーテシーをして見せる。
「試しにダンスを踊って見せましょうか?」
相手がいなくてもステップくらいは踏める。
社交界は嫌いだったが、ダンスを踊るのは好きだった。そんなことを思い出していたら、アルがおもむろに立ち上がった。
「お手並み拝見だな」
リリィの手を取り、広い場所へと連れ出した。
「アル……踊れるのですか?」
「どうだろうな」
不敵に口の端を持ち上げたアルがリリィの背中に手を置く。無意識にすっと背筋が伸びた次の瞬間、アルが大きく足を踏み出した。



