リリィ=ブランシュはスローライフを満喫したい!~追放された悪役令嬢ですが、なぜか皇太子の胃袋をつかんでしまったようです~

「これはうまいな」
「よかった!」

 ほっとしながら自分もかぶりついた。焼き立てパンのふんわりとした食感のあと、噛み応えのあるハンバーグから肉汁があふれてくる。トマトを煮詰めたソースの酸味との相性もいい。
 思ったよりも上手にできたことに満足しながら隣に顔を向けると、マノンが手を伸ばすのをためらってた。

「マノン、手で食べるのが無理だったら、フォークとナイフでも構わなくてよ?」

 マノンはハンバーガーをじっと見つめた後、おいしそうに頬張るジャンを見て、意を決したように手に取った。控えめに口を開けてかじる。

「まあ! とてもおいしいですわ」
「でしょう?」

 ハンバーグはわざわざ肉の塊を包丁で叩いて作ったし、バンズも生地から焼いた。自由を手に入れたら絶対に作ってやろうと思っていたのだ。

「こっちもうまいよ!」

 ジャンがフライドポテトをつまんで口に入れている。ハンバーガーには必須だろうと用意してよかった。
 ほかにも手でつまめるメニューをいくつか作って来た。

「畑で収穫した野菜を使ったら、きっともっとおいしくなりますわ」

 春の終わりの今植えるのは夏野菜だ。トマト、キュウリ、ピーマン、オクラ、ナス、カボチャ。考えただけでわくわくする。

「ジャンのおかげで明日には畑に種をまけそうだわ、ありがとう」
「お代以上の働きをするのが立派な男ってもんだからな」

 得意そうに胸を張ったジャンの頬が赤い。照れ隠しなのは一目瞭然だ。

 陽の光を浴びながら、気の置けない相手と笑い合って料理を食べられるなんていつぶりだろう。並んでいる料理に三人の手が次々と伸びるのを見ながら、リリィは今の自分の境遇に心から喜びを感じていた。