リリィ=ブランシュはスローライフを満喫したい!~追放された悪役令嬢ですが、なぜか皇太子の胃袋をつかんでしまったようです~

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 ニワトリ小屋作りは開始から三日で完成した。

 思ったより早かったのは、手伝ってくれたジャンのおかげもある。意外と手際がよくて褒めると『父ちゃんはもっとすごいんだ』と誇らしげに目を輝かせていた。家族思いのいい子だ。

 ニワトリ小屋完成を祝って、今日は庭でランチパーティだ。

「すごい! ごちそうだ!」

 シートの上を見てジャンが歓声を上げる。ピクニック形式で、使わなくなったテーブルクロスを地面に敷き、その中央に皿を並べて囲むように座る。

「二人とも、小屋づくりお疲れ様でした。たくさんありますので、どうぞ遠慮なく召し上がってくださいませね」
「わーい! いただきまーす!」

 ジャンがどれから食べようかと目をさ迷わせる。

「リリィ姉ちゃん、これはなに?」

 ジャンが指さしたものを見て「ふふふ」と笑う。

「それはね、ハンバーガーよ」
「アンガーバー?」
「ハ、ン、バー、ガー。ひき肉を丸めて焼いて、パンにはさんだの。サンドイッチみたいなものかしら」

 この世界にはハンバーガという食べ物はない。だから前世の記憶を取り戻して以降、ずっと食べたかったのだ。

「上と下のパンを手でしっかり挟んで、豪快にかぶりつくのよ」

 両手でハンバーガーを挟む真似をしながら説明する。
 ジャンは言われた通りにハンバーガーを両手に持つと、ちらりとこちらを見る。うなずいてやると、がぶりとかぶりついた。ジャンの目がみるみる見開かれていく。

「うまい!」

 ジャンは開口一番に言った。つぶらな瞳がきらきらと輝くのを見ているだけで、心の中がほっこりと温かくなってくる。

「たくさんあるから慌てずによく噛むのよ。アルもマノンも遠慮せずに食べてね」

 勧められたアルもひとつを手に取り口にした。