リリィ=ブランシュはスローライフを満喫したい!~追放された悪役令嬢ですが、なぜか皇太子の胃袋をつかんでしまったようです~

「お、おだててもだめですわよ。もうアルの夕食はパンとスープだけです」
「それは困ったな」

 そう言って彼がクシャリと前髪をかき上げた。額までが一気にあらわになり、顔立ちがよく見える。

 形の良い額に、真横に伸びた眉。切れ長の二重まぶたに囲まれたグリーンの瞳。

(意外と整った容姿をしていますのね)

 心の中でそうつぶやくと同時に、なぜか既視感がよぎった。

「アル、わたくし達どこかでお会いしたことがありましたか?」

 考えるより早くそう尋ねるとアルが首をかしげた。その拍子に前髪が元の位置に戻る。

「それは口説いているのか?」
「くどっ……違います!」
「残念。たぶらかしてくれるかと思ったんだが」
「もう結構です」

 ぷいっと横を向いて、ジャンを呼びに行こうとしたら「待て」と声をかけられる。

「まだなにか」
「俺が呼んでくる。その足じゃ日が暮れる」
「……助かりますわ」

 言い方は意地悪だけど、なんだかんだで面倒見がいい。根は優しい人なのだ。
 少しからかわれたくらいでムキになるなんて、自分らしくなかったと反省していると、すり抜けざまにぽんっと肩を叩かれる。

「夕飯の肉は多めな」

 前言撤回。やっぱり意地悪かもしれない。