「まったく」
あきれたような声が頭上から降ってくる。恐る恐る目を開くと、アルの胸が目の前にあった。腕を引かれた勢いで、彼の胸に抱き着くような形になってしまった。
心臓が大きく跳ね上がって変な声が漏れそうになったが根性で飲み込み、ゆっくりと体勢を戻す。
「ありがとう、アル。おかげで転ばずに済みましたわ」
にこりと微笑みを貼りつける。
内心は大慌てだが顔には出さない。元受付嬢、現役伯爵令嬢(※追放中)を侮ることなかれだ。
アルがじっとこちらを見た。
「どうかいたしまして?」
「なんでおまえはこんなところにいるんだ」
「え?」
唐突な質問に目を丸くする。
「名門ベルナール伯爵家のご令嬢なんだろう?」
「そのことですか」
リリィの実家は伯爵家だがとだが、かなり古い血筋で、家系をたどれば公爵、さらにさかのぼれば王家にもつながる。血筋だけは立派だが、当主であるリリィの父親は高齢で事なかれ主義のため、宮廷での発言権は低い。
この屋敷がベルナール家のものだということは、この街に住む人なら知っていて不思議はない。
こんな辺鄙な山すそに、名門貴族の令嬢と侍女がふたり暮らしなんて、どこからどう見てもおかしい。街でリリィの異名を耳にしていることを合わせれば、これまで聞かれなかったことの方が不思議なくらいだ。
あきれたような声が頭上から降ってくる。恐る恐る目を開くと、アルの胸が目の前にあった。腕を引かれた勢いで、彼の胸に抱き着くような形になってしまった。
心臓が大きく跳ね上がって変な声が漏れそうになったが根性で飲み込み、ゆっくりと体勢を戻す。
「ありがとう、アル。おかげで転ばずに済みましたわ」
にこりと微笑みを貼りつける。
内心は大慌てだが顔には出さない。元受付嬢、現役伯爵令嬢(※追放中)を侮ることなかれだ。
アルがじっとこちらを見た。
「どうかいたしまして?」
「なんでおまえはこんなところにいるんだ」
「え?」
唐突な質問に目を丸くする。
「名門ベルナール伯爵家のご令嬢なんだろう?」
「そのことですか」
リリィの実家は伯爵家だがとだが、かなり古い血筋で、家系をたどれば公爵、さらにさかのぼれば王家にもつながる。血筋だけは立派だが、当主であるリリィの父親は高齢で事なかれ主義のため、宮廷での発言権は低い。
この屋敷がベルナール家のものだということは、この街に住む人なら知っていて不思議はない。
こんな辺鄙な山すそに、名門貴族の令嬢と侍女がふたり暮らしなんて、どこからどう見てもおかしい。街でリリィの異名を耳にしていることを合わせれば、これまで聞かれなかったことの方が不思議なくらいだ。



