幸い前世のおかげでひと通りの家事はできる。
リリィが料理担当を志願するとマノンから大反対にあったが、その後彼女は料理が壊滅的に苦手だということがわかり、渋々ながらも了承を得ることができた。
半ヒモ状態のカレシにせっせと食事を作ってやったのが転生後で生きるなんて。人生無駄な努力なんてないわね、などとしみじみ考えていると、アルが呆れたように息をついた。
「婦女子だけで暮らすのはあまり懸命とは言えないな。なにかあったらどうするんだ」
「その通りです。ですから今、護衛人を雇おうと探しているところなのですが、なかなか」
マノンも頬に手を当てて「ふう」と息を吐く。
悪女のうわさが広まる前に新しい使用人を雇おうと思っていたのだが、もしかしたらすでに遅かったのかもしれない。
客間が一瞬しんと静まった。するとどこからともなくガサガサと物音がしてきた。マノンがびくりと肩を跳ねさせ、ドアの方を見る。
「なんの音でしょうか」
今この屋敷にいる人間は全員がこの客間に集まっている。来客があれば呼び鈴が鳴るだろうし、物音がしたのは玄関ホールではなく食堂に繋がるドアの方だ。
「ネズミでも出たのかしら? ちょっと見てまいりますわね」
「おやめくださいお嬢様! 万が一のことがあったらどうするのですか」
ソファーから腰を上げかけたが、慌てたマノンに止められる。するとアルがすっと立ち上がった。
「俺が見て来よう」
彼は静かにドアの方へと歩いて行くとドアを開け、隙間から食堂の様子をうかがう。
「なにもないようだが……ん?」
首をかしげたアルはゆっくりと振り返ってこちらをじっと見た。
リリィが料理担当を志願するとマノンから大反対にあったが、その後彼女は料理が壊滅的に苦手だということがわかり、渋々ながらも了承を得ることができた。
半ヒモ状態のカレシにせっせと食事を作ってやったのが転生後で生きるなんて。人生無駄な努力なんてないわね、などとしみじみ考えていると、アルが呆れたように息をついた。
「婦女子だけで暮らすのはあまり懸命とは言えないな。なにかあったらどうするんだ」
「その通りです。ですから今、護衛人を雇おうと探しているところなのですが、なかなか」
マノンも頬に手を当てて「ふう」と息を吐く。
悪女のうわさが広まる前に新しい使用人を雇おうと思っていたのだが、もしかしたらすでに遅かったのかもしれない。
客間が一瞬しんと静まった。するとどこからともなくガサガサと物音がしてきた。マノンがびくりと肩を跳ねさせ、ドアの方を見る。
「なんの音でしょうか」
今この屋敷にいる人間は全員がこの客間に集まっている。来客があれば呼び鈴が鳴るだろうし、物音がしたのは玄関ホールではなく食堂に繋がるドアの方だ。
「ネズミでも出たのかしら? ちょっと見てまいりますわね」
「おやめくださいお嬢様! 万が一のことがあったらどうするのですか」
ソファーから腰を上げかけたが、慌てたマノンに止められる。するとアルがすっと立ち上がった。
「俺が見て来よう」
彼は静かにドアの方へと歩いて行くとドアを開け、隙間から食堂の様子をうかがう。
「なにもないようだが……ん?」
首をかしげたアルはゆっくりと振り返ってこちらをじっと見た。



